従来、意匠法第3条は、意匠登録の要件について、

①[工業上利用することができる意匠」であること、

②意匠が新規なものであること(新規性)

③意匠が容易に創作できる程度のものでないこと(創作非容易性)

の3要件を規定しています。

創作非容易性の要件について、意匠法第3条第2項は、その意匠の属する分野における通常の知識を有する者(当業者)が、「日本国内又は外国 において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」に基づいて容易に意匠の創作をすることができたときは、この要件を満たさないとしています。この「公然知られた」とは、秘密の状態にはされておらず、現実に知られていることとされ、「日本国内又は外国において、現実に不特定又は多数の者に知られたという事実が必要」(知財高 判平成30年5月30日)でした。

近年の情報技術の発達により、より多くのデザインが刊行物やインターネット上で公開されるようになっていますが、刊行物やインターネット上で公開された意匠についても、これに基づいて容易に意匠の創作をすることができた場合には、独自の創作性を有さず、意匠権による保護に値しないとされてきました。

しかし、今回の改正により、①「公然知られた」もののほか、②「頒布された刊行物に記載された」及び、③「電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった」ものが加わります。なお、②及び③については、現実に不特定又は多数の者に知られたものである必要はありません。このように、創作非容易性の水準を明確化したことにより、刊行物やインターネット上で公開された形状等に基づいて当業者が容易に創作をすることができた意匠についても拒絶、無効の対象となるように規定し、創作性の高い意匠を的確に保護できるようになったのです。